肩関節について
肩関節は、肩甲骨と上腕骨より構成され、『肩甲上腕関節』とも呼ばれます。上腕骨の上端部分は上腕骨頭と呼ばれ、丸い形をしています。肩甲骨にはお皿の形をした窪みがあって、関節窩と呼びます。
これらの骨の表面には軟骨で覆われており、骨同士がぶつからないようにするクッションの役割と、関節をスムーズに動かすための役割を担っています。
肩甲上腕関節は球体の関節であり、他の関節よりも動く範囲が広く、多方向への動きが可能な関節です。
その反面、脱臼もしやすい非常に不安定な関節となっており、関節唇と呼ばれる組織や多くの筋肉や靭帯によって支えられています。
肩関節の疾患について
肩関節の疾患について、下記PDFファイルをご参照ください。
人工肩関節置換術について
・人工肩関節置換術(TSA:Total Sholder Arthroplasty)
・リバース型(反転型)人工肩関節置換術(RSA:Reverse Total Sholder Arthroplasty)
・人工骨頭置換術(Hemiarthroplasty)
【関節鏡手術】
・肩関節鏡下腱板断裂修復術(ARCR:Arthroscopic Rotator Cuff Repair)
・肩関節鏡下関節唇バンカート修復術
変形性肩関節症や重度の肩関節付近の外傷症例に対して手術療法として変形した肩関節の変わりに人工関節に置き換える手術療法を行います。
特に変形性肩関節症では、軟骨がすり減り関節の隙間が非常に狭い、骨棘が著しいなど肩関節の変形が進行して痛みが強いケースや保存療法で治癒が期待できないケースでは、患者様に人工関節置換術をおすすめすることがあります。
また人工関節以外にも、肩関節の腱板断裂に対する関節鏡手術も積極的に行っております。
人工肩関節置換術(TSA:Total Sholder Arthroplasty)
肩関節全体を人工関節に置き換える手術です。
骨の損傷面を取り除き、肩甲骨の関節窩(グレノイド)と上腕骨の頭部の両方を人工のコンポーネントで置換します。
手術の適応は、肩関節全体の軟骨や骨が損傷し、痛みや機能障害が著しい場合、かつ肩関節の安定に重要な役割を果たす腱板筋の機能が温存されている場合に検討されます。
リバース型(反転型)人工肩関節置換術(RSA:Reverse Total Sholder Arthroplasty)
リバース型人工関節は2014年から国内での使用が認可された比較的新しい人工肩関節です。本来の肩関節の形状を反転させた人工関節となっておりますが、これは肩腱板が断裂して機能が破綻している場合にも使用できること、TSAと比べ予後の腕の挙上範囲が広いことが特徴です。
RSAでは、TSAとは反対に、変形した上腕骨にライナーと呼ばれるポリエチレンの受け皿とステムという棒状の金属を骨内に挿入し、肩甲骨の関節窩(グレノイド)に金属のボール(グレノスフィア)とベースプレートを設置します。ベースプレートは金属のスクリューで固定します。
手術の適応は、修復することのできない腱板断裂による腱板断裂症性変形性肩関節症、腱板機能不全を伴う関節リウマチ肩、粉砕の強い骨折など、通常の肩関節形成が回復不可能な場合に選択します。
【術前術後のレントゲン】
人工骨頭置換術(Hemiarthroplasty)
人工骨頭置換術は、肩関節の上腕骨の頭部のみを人工のコンポーネントで置き換える手術です。肩甲骨の関節窩はそのまま残ります。
手術の適応は上腕骨の頭部が損傷している場合、肩甲骨の関節窩が比較的健康である場合、関節面側を温存したい若年層などに適応されます。
肩関節鏡下腱板断裂修復術(ARCR:Arthroscopic Rotator Cuff Repair)
肩関節の腱板と呼ばれる筋腱が切れることで肩の痛みや運動機能障害が発生します。
注射やリハビリテーションでは症状が改善しなかったり、肩の挙上制限で日常生活に支障をきたす、また若年層は手術の適応となります。
手術は5~6箇所に1cm程度の皮膚切開をし、ここからアンカーと呼ばれる糸が付いた小さなネジを挿入し、骨に埋め込みます。糸に切れた腱板を通し、縫着固定します。
肩関節鏡下バンカート修復術
反復性脱臼では、肩関節を安定化させる組織(主に関節包や関節唇、靭帯)が損傷します。
一度損傷すると、保存療法を行っても肩関節の脱臼を反復して引き起こしてしまうため、完全に修復するためには手術が必要です。
ARCRと同様の手段にて、関節鏡下で損傷した組織を修復します。
リハビリについて
整形外科手術として、手術後の適切なリハビリテーションが必要です。
症例によるリハビリの概要については下記PDFファイルをご参照ください。