股関節について
股関節は肩関節の次に、身体の中で最も自由に動かせる関節です。肩関節とは異なり、股関節は筋肉や腱などで全体を覆われており、安定性が強く保たれているため脱臼は比較的起こりにくいです。
股関節の構成としては、太ももの骨である大腿骨、その先端にあるボール状の形をした『大腿骨頭』と、骨盤側で骨頭の受け皿になるお椀のような窪みの『寛骨臼』で構成されます。その間には関節軟骨があり、クッションの役割と動きをスムーズにする役割を担っています。
股関節は、足と骨盤を繋ぎ体重を支える重要な関節で、体重の3~4倍の力がかかると言われています。正常な股関節では寛骨臼が骨頭の4/5を包み込んでおり、このことが関節の安定性に寄与します。股関節が安定し、更に周辺の筋肉と強調することで、私たちは脚を前後左右に自在に動かすことができます。
股関節の疾患について
股関節の疾患について、下記PDFファイルをご参照ください。
人工股関節置換術について
変形性股関節症や大腿骨頚部骨折の転位症例に対して手術療法として変形した股関節の変わりに人工関節に置き換える手術療法を行います。
変形性股関節症では、基本的にはまずは保存療法(痛み止めの内服、リハビリ、体重コントロール)を行いますが、保存療法でも痛みが十分に取れず生活に影響がある場合、また股関節の関節軟骨が破壊消失している場合には、人工関節全置換術を選択します。大腿骨の頚部骨折の場合は、年齢や骨折の度合い、また元々の日常生活レベルに合わせて、人工関節全置換術か人工骨頭置換術か、患者様個々に適した方法で行います。
【大場良輔 医師(人工関節センター副センター長)記事】
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人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)
関節軟骨が破壊消失している場合は人工関節全置換術を選択します。
大腿骨頭を切除し、骨盤側の臼蓋部に人工臼蓋を設置し、その内側にライナーと呼ばれるポリエチレンを打ち込みます。
大腿骨側にはステムという棒状の金属を骨内に挿入し、その上端に骨頭の代わりとなるインプラントを設置します。
人工物同士がこすり合うため、関節自体には痛みは全くありません。
【術前術後のレントゲン】
【手術の方法について】
当院では前方進入法(Direct Anterior法)による、低侵襲人工股関節置換術(MIS-THA)を行っております。
従来の手術法では15cm前後の皮膚切開が必要でしたが、8~10cmで済み、術中出血の軽減にも寄与します。
図の実線(黄色)のように、大腿筋膜張筋と縫工筋の筋間を割って入る方法であり、簡単な血管処理のみで容易に股関節に到達できるため、筋肉の損傷がほとんどありません。手術後の筋力低下を最小限とし、痛みも従来法と比べ少なくなります。脱臼の危険性も低く安定した可動域の獲得が得られるとともに、早期リハビリテーションが進み、入院期間の短縮に繋がります。
【当院での使用インプラントについて】
手術で使用するインプラントには、種類ごとに様々な特性があります。患者さんの骨質や年齢等により、数種類の機器の中から最適なインプラントを選択します。
人工骨頭置換術(BHA:Bipolar Hip Arthroplasty)
大腿骨頚部骨折は骨が癒合しにくい骨折となります。いずれ骨の血行不良に陥ってしまいそうな折れ方をしている場合は、人工骨頭置換術を選択します。また高齢者の場合は最初からこの手術を選択するケースもあります。
この手術は骨折した頚部から骨頭を除去し、ステムという棒状の金属を骨内に挿入し、その上端に骨頭の代わりとなるインプラントを設置します。THAとの違いは、臼蓋側の処理がないことになります。
【術前術後のレントゲン】
リハビリについて
整形外科手術として、手術後の適切なリハビリテーションが必要です。
症例によるリハビリの概要については下記PDFファイルをご参照ください。